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Webシステムの開発における仕様書とは何?
Webシステムの開発における仕様書とは「開発対象のWebシステムが満たすべき要求事項や仕様をまとめた書類」です。
複数の人がさまざまな工程をこなしてひとつのシステムを構築する開発現場では、誤解や思い込みから作業の抜けや重複が発生するおそれがあります。このような事態を防ぐために事前に作られるのが仕様書です。
まずは、設計書との違いや仕様書の重要性についてそれぞれ解説しますので、見ていきましょう。
設計書との違い
仕様書と設計書の違いは「どんな事柄が明確化されているか」です。仕様書は完成したシステムを明確化したもの、設計書は制作工程を明確化したものです。
「Webシステムを作成したい」という希望に対して、仕様書はどのようなWebシステムを作るのかを示し、設計書はそれをどのように作るのかを示します。
仕様書の重要性
仕様書の「仕様」とは「満たさなければならない要求事項」のことを指します。
開発前に完成イメージの定義が曖昧なままだと、認識の相違が発生するおそれが高まるでしょう。仕様書は、このような事態を予防するために欠かせない存在です。
エンジニア・PM(プロジェクトマネージャー)は、仕様書をベースに開発を進めるため、完成イメージである仕様が定まっていなければ、開発そのものが失敗する可能性が高まります。そのためシステム開発においては、事前の要件定義が重要です。
仕様書の種類
仕様書の種類には、以下の3つが挙げられます。
- 要求仕様書
- 機能仕様書
- 技術仕様書
仕様書は、種類ごとに求められる内容が大きく異なります。しかし、いずれも開発に着手する前に作成されるため、システムの土台といえる存在ばかりです。ここでは、それぞれの役割や違い、誰が制作するのかなどについて解説しますので、見ていきましょう。
要求仕様書
要求仕様書は「成果物に要求されていること」をまとめた書類です。わかりやすくいうと「どのようなものを作り、開発したシステムによって何を実現したいのか」をまとめたものだといえるでしょう。
この要求仕様書をもとに要件定義を進めていきます。要件定義とは、成果物に必要な機能をまとめ、具体的な進め方を決める作業です。一般的には、プロジェクトを発注する側が作成します。
機能仕様書
機能仕様書は「要求仕様書に記載したことをどのような機能を使って実現するのか」をまとめた書類です。システム改修の場合は、既存の仕様を整理してまとめる必要があります。
機能仕様書の目的は、発注者側と開発側の認識に相違がないかを確認することです。開発会社のPMやシステムエンジニアが、発注者の要望を聞いて作成します。
技術仕様書
技術仕様書は「機能仕様書に記載した機能を開発するための手法」をまとめた書類です。プログラマー間で統一した認識共有するために準備します。
求められるすべての機能に対して作る必要はありませんが、複雑な要素を解説するために用いられることがほとんどです。技術仕様書は、一般的に開発会社のシステムエンジニアがプログラマーと相談しながら作成します。
わかりやすい仕様書の特徴は5つ
わかりやすい仕様書の特徴には、以下の5つの共通点があります。
- イメージ画像が挿入されている
- 画面遷移図がある
- シーケンス図がある
- 背景や理由が明記されている
- 複数の選択肢が用意されている
わかりやすい仕様書は「読む人」がイメージしやすいように工夫が施されていることがほとんどです。ここではそれぞれに分けて解説します。
特徴1.イメージ画像が挿入されている
文字で完成図が記載してあるだけの仕様書では、Webサービスやアプリの完成版のイメージを正しく伝え切れません。事前に仕様書内にイメージとなる画像を挿入しておくと、サービスの目指すべき方向性やビジュアル面のイメージ共有がより一層深まります。
可能な限り事前にヒアリングをして、発注者が望みそうな完成イメージを添付し、それをエンジニアの間で共有することが重要です。
特徴2.画面遷移図がある
画面遷移はシステムやアプリのアイコンなどをクリックしたときに、移り変わる画面のことを指します。Webサービスやアプリにおいて、ユーザビリティに直結する重要な要素といえるでしょう。
仕様書に画面遷移図を添付することで、システムの全体像を関係者が理解し、全員で共有することが可能になります。また、画面同士の関係も明確になります。さらに、画面遷移図があることによって、全体を俯瞰して確認できることがメリットです。
特徴3.シーケンス図がある
シーケンス図とは、システムの設計を視覚的に把握するためのものです。時間軸に沿ったやりとりを表現できます。ユーザーのアクションに対して、システムはどのように呼応するのかなどの流れを把握しておくことは開発するうえで重要です。
シーケンス図を作成するとそれだけ工数は増えてしまいますが、開発途中の認識相違が発生しないようにするためにも、ちゃんと準備しておくことをおすすめします。
特徴4.背景や理由が明記されている
既に決定された事項だけが書かれた仕様書は、とてもわかりにくいものです。
「なぜこのような仕様としたのか」という背景から理由まで明記されていると、仕様変更や改版があった際、修正しても問題ないかを確認できます。開発中のコミュニケーションコストを削減することにもつながるため、これらの要素もできるだけ仕様書に落とし込みましょう。
また不確定事項があったとしても、その事実を記載しておくだけでも役立ちます。
特徴5.複数の選択肢が用意されている
システム開発のゴールは同じでも、達成方法はひとつではありません。仕様書を提示する段階では、開発は未だ手つかずの状態です。
そのため、最初に方向性や手段を絞り込み過ぎると、開発の可能性を狭めてしまうおそれがあります。開発がうまく進む仕様書は、選択肢を絞り込みすぎず、複数のプランが用意されていることがほとんどです。
仕様書の作成に役立つおすすめツール3選
仕様書の作成に役立つおすすめツールには、以下の3つが挙げられます。
- moqups
- cacoo
- パワーポイント
2つは有料オンラインツール、1つは定番のOfficeウェアです。ここではそれぞれのツールの特徴やおすすめの利用シーンなどを解説します。
おすすめツール1.moqups
moqupsは、ワイヤーフレーム・モックアップ・ダイアグラム・グラフなどをドラッグ&ドロップの直感的な操作で作成できるオンラインデザインツールです。対応言語は英語のみとなっていますが、直感的な操作で仕様書の作成を行えるため、英語に詳しくなくてもそこまで困ることはないでしょう。
また、テンプレートが数多く用意されているため、イメージ通りの仕様書を誰でも作成できます。最終的な要求仕様書を作成する際に、オンライン上でやり取りするような使い方も可能です。
参考:Moqups
おすすめツール2.cacoo
cacooには、ワイヤーフレームやモックアップなどはもちろん、フローチャート・ネットワーク図・データベース設計図・ガントチャートなどさまざまなテンプレートがそろっています。
初めて仕様書を作成する人でも簡単に作成可能です。また、SlackやDropboxなどのアプリと連携して使えるのもポイントです。ほかにも、編集画面上でビデオ通話ができるため、cacoo上でコミュニケーションを図ることもできます。
参考:Cacoo(カクー)
おすすめツール3.パワーポイント
マイクロソフト社のパワーポイントは、ユーザー数が多く、ワイヤーフレーム作成に必要な機能がそろっているソフトです。
そのため、共有や作成時の使い勝手がよいでしょう。また、オフライン環境でも使えるため、パソコンさえあれば、移動中にも作業できます。注意点としては、プレゼン用の企画書のような体裁にならないようにすることが挙げられます。
参考:プレゼンテーション資料作成 – PowerPoint 無料
まとめ
Webシステム開発における仕様書の重要性やわかりやすい仕様書の特徴、おすすめしたい作成ツールについて解説しました。Webシステムの開発には多くの関係者が存在するため、ゴールとなる仕様を事前に明確化することはとても重要です。
そのベースとなるのが仕様書となりますので、作成のポイントを理解しておくことは快適な開発環境を整えることにもつながるでしょう。この記事で解説したことをチェックして、仕様書を作成してみてください。