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カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは直訳すると「顧客の旅」となり、顧客が興味を持ち商品を実際に購入から利用までの道筋を「旅」に例えたものです。
現代の顧客の消費行動は昔と比べると多様化しています。複数の媒体を横断して情報や商品を購入しており、企業とのコンタクトポイントの面においても顧客接点が多数生まれてきています。
そのため、顧客の商品認知から購入に至るまでのプロセスを把握することが、より一層難しくなっているのです。
このような状況下で見込み顧客に自社の商品やサービスのファンになってもらうには、顧客体験を理解する必要があります。
その顧客体験を理解するにはカスタマージャーニーを設定し、さらに可視化したカスタマージャーニーマップを作成することで顧客の行動を把握できます。その結果として、適切なタイミングで情報を提供できるようになるのです。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーを可視化して図式化するマーケティング手法の一つです。カスタマージャーニーマップは、顧客の行動や思考を把握する目的で作られます。
顧客によって、商品やサービスを認知して購入するまでの一連の流れは異なるものです。そのため、顧客の行動や心理状態、企業との接点を全体像から見ることで、顧客に対しての課題や対策を把握できるようになります。
カスタマージャーニーは「意味ない」「古い」と言われる?
カスタマージャーニーは「意味ない」「古い」と言われるケースもあります。実際、インターネットやSNSの普及によって顧客行動が多様化しているため予測しづらく、カスタマージャーニー通りに進まないパターンも見られます。
そのため、スピード感が求められる現代においては、カスタマージャーニーはマッチしないという意見が出てくるのは当然のことかもしれません。
しかし、カスタマージャーニーを作成しないと、顧客理解を遠のける原因にもなりかねません。顧客は必ず何かしらの方法で企業との接点を持ち、商品やサービスの購入に至ります。
よって、ゴールに至るまでの顧客の行動や心理状態を一つずつ紐解いていかなければ、顧客理解にはたどり着けません。
まずは、基本的なカスタマージャーニーを作成し、顧客行動を理解していく中で徐々にアップデートしていくことが重要です。
カスタマージャーニーを作成するメリット
カスタマージャーニーを作成するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つのメリットについてご紹介します。
マーケティング指針が明確になる
カスタマージャーニーマップは、マーケティングに関連するメンバーへの共有に適したツールです。作成の際は単独で考えるのではなく、組織内の多数メンバーで顧客体験を可視化することで、顧客行動への共通認識を持ちやすくなります。
たとえば「アンケートによるユーザーの声」や「Webサイトのアクセス履歴」などを多数のメンバーで分析することで、顧客行動への理解が深まり、マーケティング指針がより明確になります。
商品に接点するまでの顧客行動を理解できる
カスタマージャーニーマップは顧客体験を可視化して分析するため、顧客行動を深く理解できます。そのため、顧客の行動に合わせた最適な施策を考えやすくなるのです。
また、特定のペルソナの行動や心理状態を絞って整理するため、シンプルかつ分析しやすいというメリットもあります。
開発や戦略に顧客目線を取り入れられる
カスタマージャーニーマップを取り入れると顧客行動全体を可視化できるため、顧客に寄り添ったマーケティング施策を考えられるようになります。
カスタマージャーニーマップを作成する際は顧客に寄り添って感情や行動を記入するため、顧客目線で商品やサービスを考えることができます。
顧客行動を理解していないと、マーケティング施策は曖昧なものになりかねません。カスタマージャーニーマップを取り入れることは、戦略的なマーケティング施策の立案につながります。
カスタマージャーニーマップの作り方
ここでは、実際どのようにカスタマージャーニーマップを作成するのか見ていきましょう。マップは5つのステップに沿って作成します。
- ペルソナ設定
- フェーズ設定
- ペルソナ行動の整理
- 施策の設定
- 整理した内容をマップに仕上げる
STEP1:ペルソナ設定
カスタマージャーニーマップを作成するにあたり、まずペルソナを設定します。
ペルソナとは、商品やサービスを利用する顧客像のことです。たとえば年齢や性別、居住地や仕事、ライフスタイルなど、どんな人物かわかる要素を詳細に設定しましょう。
【例1】
- 性別:女性
- 年齢:24歳
- 仕事:損保会社の一般職、新卒入社
- 居住:〇〇駅徒歩7分の築浅賃貸マンションで一人暮らし
- 趣味:カフェ巡り(トーンを抑えた丁寧な暮らし系が好み)
- 学歴:〇〇大卒
【例2】
- 性別:男性
- 年齢:35歳
- 仕事:IT系営業職、昨年同業他社から転職
- 居住:〇〇駅徒歩15分のマンションで、2歳のこどもと妻と3人暮らし(3年前に結婚)
- 趣味:結婚後は、休日は家族で公園へ出かけることが多い
- 学歴:〇〇大卒
上記のようにペルソナを詳しく設定すると、その人物がどのような思考で商品やサービスを購入するかイメージしやすくなります。
また、必要に応じて複数のペルソナを設定するケースも少なくありません。このような場合も、ペルソナごとにカスタマージャーニーマップを用意しましょう。
STEP2:フェーズ設定
ペルソナの設定を終えたら、企業の目的に沿ってフェーズを設定します。顧客の主な購買行動は次のとおりです。
- 認知・関心
- 情報収集
- 比較検討
- 購入
- 継続
これらのフェーズを横軸に設定します。次に、縦軸にはカスタマージャーニーの基本となる要素を設定します。
- 行動
- タッチポイント
- 感情
- 思考
- 課題・施策
STEP3:ペルソナ行動の整理
フェーズの設定後はペルソナの行動や思考、感情をマップに整理します。集めた情報をもとに行動パターンを分類し、予測できる行動を可視化します。その際に付箋を利用し、思いつくままに貼り付けていくと効果的です。
次に、思考と感情を整理します。顧客が行動する時の思考や感情をフェーズごとに分類しましょう。分類する際はテキストだけでなく、絵文字や折れ線グラフなどで表現することで、感情の変化がわかりやすくなります。
また、複数人で作業するとペルソナの体験をより想像しやすくなります。思考や感情は、できるだけ顧客視点で考えることが大切です。
顧客視点で考えていないと、自社にとって都合の良い顧客の思考や感情になる可能性もあるため、注意しなければなりません。
STEP4:施策の設定
顧客の行動や心理状態を整理し終えたら、マップ全体を見回して現状の課題に対する改善策や施策を探しましょう。全体を見回すことでペルソナの行動や感情を理解でき、フェーズごとの施策を考えやすくなります。
STEP5:整理した内容をマップに仕上げる
最後に整理した内容をもとに、設定したフレームに沿って顧客の行動・思考・感情などに対する解決策をマップに仕上げていきます。その際は、一人で作成するのではなく各部署から人を集めて意見を聞きながら作成するとよいでしょう。
ワークショップ形式で行うとさまざまな職種からの視点が見えるようになり、より具体的な施策や改善案を発見できる可能性が高まります。マッピングの際はメモや付箋を使って進めることで、より効率的に進められるでしょう。
カスタマージャーニーマップのテンプレート紹介
カスタマージャーニーマップの作成方法について紹介してきました。カスタマージャーニーマップは一から作るとなると、難しく感じてしまうかもしれません。
そこで、4つのテンプレートを紹介いたします。無料で使用できるテンプレートもあるのでぜひ参考にしてみてください。
イノーバ
「オウンドメディア」のパッケージサービスを提供している、株式会社イノーバが提供するテンプレートです。次の2種類のカスタマージャーニーマップが用意されています。
- BtoB
- ECサイト
株式会社イノーバのテンプレートは、会員登録なしでダウンロードができます。
ferret
Webマーケティングメディアのferretが提供している無料テンプレートです。会員登録をすることでダウンロードができます。作りはとてもシンプルで、次の3つの横軸で用意されています。
- 認知
- 関心
- コンバージョン
カスタマージャーニーマップを初めて作成する方でも利用しやすい、シンプルなマップです。
ExperienceFellow Web Software
英語力に自信があれば、ExperienceFellow Web Softwareがおすすめです。ExperienceFellow Web Softwareは、カスタマージャーニーマップを自動作成してくれるオンラインツールです。
被験者にアプリを入れてもらい購買行動を記録することで、ユーザー体験を記録しカスタマージャーニーマップにまとめていく高度なシステムが特徴です。
チーム内でカスタマージャーニーマップを起点にコメントを登録できるのでコミュニケーションの促進にも繋がります。ただし、料金は月額制で、日本語には対応していません。
Miro
Miroは、複数人で共同作業ができるオンラインホワイトボードツールです。
テンプレートが150種類以上用意されており、目的に応じて利用ができます。カスタマージャーニーマップのテンプレートももちろんあります。
Miroの特徴は、共同作業ができる点です。マップの作成時にわざわざ集まらなくてもオンライン上で進められます。
他のテンプレートと組み合わせれば、さらに効率よく進めることができるでしょう。会員登録だけで無料で使用できます。ぜひ一度試してみてください。
まとめ
今回の記事では、カスタマージャーニーの概要から作り方、テンプレートなどについて解説しました。
現代において、顧客理解度を深めることは重要な企業活動といえるでしょう。
カスタマージャーニーマップを取り入れることによってユーザーの行動や心理状態を理解でき、顧客に対する最適なアプローチの考案につながります。
また、カスタマージャーニーを全体に共有すれば、マーケティング戦略の立案から実行までを効率よく進められます。ぜひ本記事を参考に、カスタマージャーニーマップ作成を実践してみてください。