発注書とは?
発注書とは、証憑書類の一種であり商品やサービスを注文し、取引が成立したことを証明する書類を指します。証憑書類とは取引の証明をする書類であり、一定期間保存しておかなければなりません。ここでは、発注書に関する以下の3つについてご紹介します。
- 発注書の2つの役割
- 注文書との違い
- 発注書の送付前に準備しておくべきもの
BtoBでサービスを受けたり商品を注文する際は必要になるため、発注書について理解しておきましょう。
発注書の2つの役割
発注書の役割として、以下の2つがあげられます。
- 発注側と受注側での認識のズレを防ぐ
- 双方の信頼感を高める
正式な書類を介さずに契約を進めると、口頭や曖昧な取り決めに頼ることになり、価格や納期、注文内容などで認識の違いが生じるリスクがあります。このようなズレが生じると、信頼関係が損なわれる可能性もあります。
しかし、予め取引に関する詳細を記した「発注書」があれば、いつでも取引内容を確認できます。発注書は、お互いの信頼を保ちながら円滑に取引を進めるための重要な役割を果たします。
注文書との違い
発注書と注文書の違いはほとんどなく、名称の違いのみです。どちらも商品やサービスを依頼するために発注する側が作成し、受注先へ提出して発注内容を確認するために使用します。
業界によって呼び方が変わるようですが、発注側と受注側で言い方が異なると混乱を招く可能性があります。そのため、同じ発注・受注者との間では呼び方を統一するのがおすすめです。
発注書の送付前に準備しておくべきもの
発注書を送付する前に準備しておくべきことは以下の通りです。
- 納期や発注概要など、発注書の作成に必要な情報が確認できるもの
- 発注書の送付先
発注書を正確に作成するためには、記載内容に誤りがないか十分に確認することが重要です。そのため、発注書に記載する必要がある情報を事前に整理しておきましょう。また、発注書を作成する前に、見積書などを用いて依頼内容や価格について双方の認識をすり合わせておくのが一般的です。
さらに、見積書やメールの履歴など、やり取りの記録が手元にあると安心です。これらは後から確認する際の証拠にもなります。加えて、送付先の住所やメールアドレスが正しいかをしっかり確認することも重要です。誤った情報で送付すると納期に影響が出る可能性があるため、慎重にチェックしましょう。
発注書を書く3つの理由
発注書を書く理由として以下の3つがあげられます。
- 正式に発注した証跡を残すため
- 安心して取引してもらうため
- 双方の認識のズレを防ぐため
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。発注書を書く理由について理解しておくことで重要性がわかるため、確認しておきましょう。
1.正式に発注した証跡を残すため
発注書を作成すると、商品やサービスを正式に発注した証拠が残ります。この証拠があれば、受注先が発注内容と異なるものを納品した場合や、納品が行われなかった場合に相手側の過失を証明できます。
正式な発注書がない場合、不適切な成果物を受け取らざるを得ないこともあります。取引のトラブルを防ぎ、自社を守るために発注書は必ず作成しましょう。
2.安心して取引してもらうため
発注書があることで、取引が正式に成立した証拠となります。これにより、受注側も安心して取引を進めることができ、発注内容を確認できるため、納品ミスを減らすことができます。
口約束で発注された場合、受注側は後で「発注した覚えがない」と言われても証拠がないため、受け入れるしかなくなります。そのため、発注書は発注側だけでなく、受注側にとっても取引を安全かつ円滑に進めるために重要です。
3.双方の認識のズレを防ぐため
電話やオンラインミーティングのみなど、お互いに合意した発注内容が書類のように形として残らない方法で契約した場合、双方間で認識違いが起きている可能性があります。
とくに、電話は聞き間違いや言葉のニュアンスによる勘違いが発生しやすく、認識の違いからトラブルに発展するケースも多いでしょう。発注書のようにお互いの合意を得た発注内容を記した書類を残せれば、認識違いがあっても直ぐに確認できることも発注書を作成する理由の一つです。
ただし、発注書の書き方によっても双方の認識違いを招く可能性があります。わかりやすい単語を使うなど書き方も工夫しましょう。
ホームページにおける発注書の書き方
ホームページを依頼する際の発注書の書き方について、以下の5項目は必ず書く必要があります。
- 発注する制作会社名
- 諸条件
- 見積書の項目
- 印鑑
- 特記事項
ここからは、それぞれの項目で重要なことを詳しく解説します。上記の項目が全て正しく書かれていれば、修正を求められることは少ないため必ず確認しましょう。
1.発注する制作会社名
ホームページ制作を依頼する際には、発注者が依頼先のホームページ制作会社に向けて発注書を作成します。発注書には、どの会社に対して商品やサービスを依頼するのかを明記する必要があります。依頼先のホームページ制作会社の名前は、必ず記入しましょう。通常、書類内では左上に記載されることが一般的です。
会社名は略すのではなく正式名称で書く必要があります。
2.諸条件
発注書に書くべき諸条件として、以下の3つがあげられます。
- 案件の納期
- 成果物の納入方法
- 支払条件
ここからは、それぞれの条件について詳しく解説します。発注側である自社が求める条件を書きましょう。
案件の納期
ホームページを完成させ発注者に引き渡す期日を書きます。こちらも双方の認識違いを防ぐために、〇月中などではなく日付まで細かく書くことをおすすめします。
成果物の納入方法
納入方法では、完成したホームページの引渡し方法を書きましょう。ホームページにあまり詳しくない企業の場合、「弊社指定の方法」と書けば難しい指定はいりません。
制作会社によっては、サイト公開やファイル形式など納入方法によって費用が変わるケースもあります。納入直前に条件を提示すると追加費用がかかる可能性もあるため、事前に制作会社とすり合わせをしておきましょう。
支払条件
支払い条件には、発注者側が取り決めている外部へ依頼する場合の支払いルールを記載します。もし社内に経理部がある場合は、その担当者に確認するのが良いでしょう。
具体的には、成果物の検収日と支払日を明記します。一般的には、納入日の月末に検収を行い、翌月末に支払いを行うことが多いですが、社内のルールに従って記載しましょう。
3.見積書の項目
見積書の項目では、ホームページ制作会社から発注者に提出された見積書の詳細を記載します。ホームページ制作にはさまざまな作業があり、オプションなどによって費用が異なります。見積書には注文内容の詳細が記載されているため、発注内容を確認するための重要な資料となります。
また、見積書には専門的な用語が使われることがあります。項目ごとに費用の内容が何を意味しているのかを把握するため、理解できない部分があれば、必ず見積もりの段階で制作会社に確認しておきましょう。
4.印鑑
印鑑がなくても発注書の法的効力には影響はありませんが、印鑑があることで受注者に安心感を与えやすくなります。取引をスムーズに進めるためには、信頼関係を築くことが重要であり、その一環として印鑑を押して提出するのが望ましい場合があります。
5.特記事項
特記事項では、取引を行ううえでトラブルになりやすい項目について書きます。ホームページ制作の場合は、以下の2点でトラブルが発生しやすい傾向にあります。
- ホームページを閲覧するのに必要なネット環境(OSやブラウザ)
- ドメインやサーバーの料金体系
説明が抜けたり勘違いが起きやすい部分であるため、特記事項の欄に書いておくと良いでしょう。
発注書の書き方における4つの注意点
発注書を書く際に注意すべきポイントとして、以下の4つがあげられます。
- 見積書の表記と合わせる
- 発行後は一定期間保管する
- 書式に指定がある場合は順守する
- 課税文書となる場合は収入印紙を用意する
ここからは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。発注書はミスがあると正しく発注されなかったり修正が必要になったりするため、提出前にきちんと確認しましょう。
1.見積書の表記と合わせる
見積書の表記と発注書の表記を合わせることで、勘違いや認識違いなどが原因のトラブルを防げます。見積書を受け取ってから料金や依頼内容が変更になった場合は、発注書に記載する見積書の内容も変更しておきましょう。
2.発行後は一定期間保管する
発注書は、取引を証明するための重要な書類であり、確定申告や税務調査の際に必要になる場合があります。そのため、一定期間保管しておくことが求められます。保管年数は事業形態によって異なり、以下の通りです。
- 個人事業主:5年間
- 法人:7年間
- 法人で欠損金が発生した年度:最大10年間
これらの期間は、確定申告書を提出する期限の翌日から数えます。ただし、発注書だけでなく、請求書や領収書などの関連書類も併せて保管することが推奨されます。
3.書式に指定がある場合は順守する
受注先から発注書の書式を指定されるケースもあります。その場合は指示に従った書式の発注書を作成し、見積書とも書式を合わせるようにしましょう。
4.課税文書となる場合は収入印紙を用意する
課税文書とは、印紙税の課税対象となる書類を指します。印紙税は、金銭の授受を伴う取引で作成される契約書や受領書などに課される税金です。課税対象となる文書は、印紙税法別表第一で詳細に定められています。
課税文書に該当する場合は、「収入印紙」という切手のような証票を貼り付ける必要があります。収入印紙を消印することで初めて納税した証拠になるため、必要な場合は必ず収入印紙を用意しましょう。
なお、ホームページ制作の発注書が課税文書に該当するかは、その内容によります。単なる注文の意思表示に留まる場合は課税対象外ですが、発注書に契約内容(受注金額、納期、条件など)が記載され、署名や押印が行われている場合は、契約書として認識され課税対象となる可能性があります。取引書類について疑問がある場合は、税理士や専門家に確認することをお勧めします。
発注書の書き方でよくある3つの質問
発注書の書き方でよくある質問として、以下の3つがあげられます。
- 電子契約による場合は収入印紙が必要ですか?
- 発注書はメール添付で送っても問題ないですか?
- 金額なしの発注書もありますか?
ここからは、それぞれの質問について詳しく解説します。
質問1.電子契約による場合は収入印紙が必要ですか?
国税庁のガイドラインによれば、電子契約書は印紙税法が対象とする「紙の文書」に該当しないため、収入印紙を貼る必要はありません。これは、電子データとして契約が完結する場合に適用されます。
一方で、電子契約書と紙の契約書を両方使用する場合については次のように整理できます。
- 電子契約書が正式な契約書であり、紙の契約書が控えや参考用として作成される場合は、収入印紙は不要です。
- 一方、紙の契約書が正式な契約書として効力を持つ場合には、その紙の契約書が課税文書となり、収入印紙が必要となります。
電子契約を使用する場合でも、運用方法や契約形態によって税務上の取り扱いが変わる可能性があるため、契約形態に応じて専門家に相談することをお勧めします。
質問2.発注書はメール添付で送っても問題ないですか?
発注書をメール添付で送ることは問題ありません。むしろメール添付の方が印紙やインク、切手代などのコスト削減になります。
また郵便での送付の場合は、到着までに数日かかる場合がありますが、メール添付であれば提出して数分後には取引先に届きます。時間の節約にもなりスピード感をもって取引を進められるため、メール添付がおすすめです。
ただし、注意点として、電子データでの発注書には印紙税が課されない一方、電子契約の正式な形態として法律的な効力が必要な場合は、電子署名やタイムスタンプを用いることが推奨されます。これにより、取引の信頼性をさらに高めることができます。
質問3.金額なしの発注書もありますか?
結論からいうと、金額なしの発注書を使用することは可能ですが、特定の条件を満たす場合に限られます。
たとえば、ホームページ制作のように、実際に制作を進める過程で必要な機能やオプションが確定するケースでは、金額を後から確定させるために金額未記載の発注書が認められる場合があります。
ただし、金額を記載しない理由を明確に説明する必要があります。
発注書内や添付文書で「金額未記載の理由」を記載し、取引先と十分に合意しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
まとめ
今回は、ホームページ制作を依頼する際の発注書について、その書き方や役割、注意点を紹介しました。発注書なしで契約を進めると、発注側と受注側の認識に違いや勘違いが生じるリスクが高く、円滑に取引を進めることが難しくなる可能性があります。
金銭が関わる取引では、信頼感を保つことが非常に重要です。トラブルを未然に防ぐためにも、発注書は必ず作成するべき書類です。必要な項目を確認し、双方が納得した上で取引を進めましょう。
また、発注書はなるべくメール添付で提出するのが望ましいですが、取引先がメール対応していない場合もあります。予め提出方法を確認しておくことで、スムーズに取引を進めることができるでしょう。