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Movable Type (MT)とは
Movable Type (MT)とは、シックス・アパート株式会社が開発、提供するCMSです。
CMSとはコンテンツ管理システムのことで、Webの専門知識がなくてもツールを利用するだけで容易にページの更新・編集が可能なツールを指します。Movable TypeもCMSの一つであり、同じくCMSとしてよく取り上げられるWordPressと並んで、個人サイトから企業サイトまで幅広く利用されているツールです。
Movable Typeは「静的生成」と「動的生成」が可能です。
静的生成 = いつどこでアクセスしても同じページが表示されるHTMLファイルで作成されたWebページ
動的生成 = アクセス状況に応じて表示内容が変わるPHPファイルで作成されたWebページ
本来は、運営するサイトに応じてそれぞれ作り分ける必要がありますが、Movable Typeはどちらのページ作成にも対応しているのが特徴です。
国内におけるMovable Typeの実績
株式会社DataSignが発表したデータによると、Movable Typeの日本国内シェア率は上場企業のWebサイトで使われているCMSランキングにおいて第3位の実績があります。
また、国産CMSでは第2位*、オープンソースではなく、企業が運営している商用パッケージ型CMSの中では第2位のシェア率を誇ります。2015年度からは5年連続で商用パッケージ型CMSの導入シェア1位を獲得しており、国内のWebサイトでの導入実績は5万件以上です。
*Movable Typeはもともと米国のSix Apart社発祥のCMSですが、2011年に日本のシックス・アパート社が権利譲渡を受けて運営しているため、国産CMSに位置付けられます。
DataSign Report 上場企業 CMS調査 2021年8月版
Movable Typeのシリーズ
Movable Typeは、運営するサイトやサービスの要件に応じて、さまざまなシリーズで提供されています。
Software(ソフトウェア版)
「Software」は、サーバーにインストールして利用するソフトウェア版のシリーズです。インストールするサーバーは自分たちで用意するため、サーバーの設定や管理が自在に行えます。
また、独自のプログラムとの連携により、高度なカスタマイズも可能です。「所有しているサーバーにインストールして使いたい」「社内システムと連携させたい」といった場合におすすめです。
費用:90,000円(2022年4月現在)
※30日間の無料トライアルあり。初年度はメンテナンス費含む、次年度以降のメンテナンス費は別途30,000円/年
Cloud(クラウド版)
「Cloud」は、サーバー用意やインストール作業が不要のクラウド版です。クラウド環境はMovable Typeに最適化されているため、管理画面などの動作は高速です。
また、生成したコンテンツを外部サーバーへ配信できる「サーバー配信機能」が搭載されています。公開サーバーにCMSを導入せずにWebサイトの運用が可能となり、セキュリティリスクを軽減できます。
「サーバー管理の手間を省いて運用コストを抑えたい」、「常に最新の環境で利用したい」といった場合におすすめです。
費用:5,000円〜/月(2022年4月現在)
Enterprise(エンタープライズ)
企業向けエンタープライズ版として、ソフトウェア版の上位シリーズであるMovable Type Advanced が提供されています。
「Oracle」や「Microsoft SQL Server」といった商用データベースへの対応など、社内システムと連携させた大規模システムの運用に最適なシリーズです。
クラウド版にも実装されているサーバー配信機能が利用可能で、1ライセンスで複数のサーバーにインストールできます。大規模システムの運用時にはおすすめです。
費用:1,200,000円(2022年4月現在)
※初年度はメンテナンス費を含む、次年度以降のメンテナンス費は別途240,000円/年
Movable Type AMI
Movable Typeがインストールされた、OS込みのMovable Type AMI(Amazon Machine Image)です。
このAMIを利用することで、Movable Typeがあらかじめインストールされたサーバーを「AWS EC2」上に構築できます。AWS(Amazon Web Services)を利用した拡張性の高い運用を行いたい場合におすすめです。
費用:0.07ドル/時間 499ドル/年(2022年4月現在)
※7日間の無料トライアルあり
MovableType.net
「MovableType.net」は、Saas型CMSのMovable Typeです。「動的生成のみ対応で静的生成はできない」「プラグインの利用はできない」など、他のシリーズに比べていくつか機能的な制限はあります。
ただし、アカウントを作成すればすぐに利用でき、他のシリーズと比べてイニシャルコストがほとんどかからないのは魅力です。Webサイトの制作コストや管理コストを削減したい場合におすすめのシリーズです。
費用:2,500円〜/月 25,000円/年(2022年4月現在)
※Webサイトごとに14日間の無料トライアルあり
Movable Type7の機能的特徴
最新バージョンであるMovable Type7の機能的特徴をご紹介します。
独自のテンプレートタグ
Movable Type独自のテンプレートタグを用いることで「HTML」「CSS」「JavaScript」などの知識を必要とせず、デザイン通りの形を実現できます。
また、レスポンシブデザインにも対応しているため、スマートフォン対応サイトも容易に作成できます。
ブロックエディタ機能
ブロック単位のコンテンツ作成を可能とするブロックエディタ機能が搭載されています。
これにより、見出しやテキスト、画像などあらかじめ用意されたブロックを組み合わせたオリジナルコンテンツが作成可能です。また、マークアップ不要の簡単な記事編集も可能となりました。
スパム判定機能
スパム判定機能により、記事に着いたコメントやトラックバックに対してスパムの自動判定を行えます。「-10(迷惑度:最大)」から「+10(迷惑度:ゼロ)」まで範囲の数値を設定可能で、指定した判断基準値よりも低い値に位置するコメントやトラックバックを自動的にスパム判定してくれます。
企業サイトなどは、コメントやトラックバックが多くなると1件ずつ手動で確認するのが手間になりがちですが、スパム判定機能を利用することで確認作業を効率化できます。
WordPressとの違い
CMSといえば、WordPressも代表的なツールとして有名です。Movable TypeとWordPressはどのような違いがあるのでしょうか。
ライセンス利用の費用
一番の違いは、ライセンス利用における費用の有無です。Movable Typeはライセンス利用が有償ですが、WordPressは無償で利用できます。
そのため、Webサイト制作においてWordPressが採用されるケースが多く、世界中のシェア率はWordPressの方が高くなっています。
開発元
Movable Typeはシックス・アパート株式会社が提供しており、WordPressはオープンソースとなっています。
WordPressはオープンソースであるため誰でも無償で利用できる点がメリットです。ただし、ソースコードなどの中身の構造は誰でも見ることができるため、悪意ある第三者からの攻撃対象になるケースも少なくありません。
一方、Movable Typeは企業が提供するツールであり、その分中身の構造を参照されることは少ないのが特徴です。セキュリティ的にも強固であるため、WordPressと比べて攻撃対象となるリスクは低く、安全に利用できます。
構築に適したサイト
WordPressはサイトへのアクセス毎にページを動的生成するため、アクセス数や画像の多いサイトはサーバーに負荷が掛かり、表示時間が掛かります。そのため、自社サイトやブログなど、1つのサイトを構築する場合に適しています。
一方、Movable Typeはシリーズによっては静的ページの生成にも対応しており、ページ数が多い大規模サイトや複数サイトの運営に向いています。
メインの開発言語(PerlとPHP)
メインの開発言語はMovable Typeは「Perl」、WordPressは「PHP」です。Movable Typeで実際にPerlを使うケースはほとんどありませんが、プラグインを自作する場合には必要になります。
WordPressも、既存テーマを利用する場合はPHPを使うことは少ないですが、機能の追加やオリジナルテーマの作成などを行う場合はPHPの知識が多少必要になります。
Movable Typeのメリット
Movable Typeを利用することによるメリットは以下の通りです。
動的ページでも作成が可能
Movable Typeでは静的ページはもちろん、動的ページも作成可能です。そのため動きのない静的サイトや、ショッピングサイトや掲示板などの動的サイトまで、幅広いWebサイト制作に適しています。
開発会社のサポートを受けられる
企業が提供しているツールであるため、公式のサポート体制が充実しています。ライセンスを購入した場合は、開発会社のサポートを受けることが可能です。
インストールなどの環境構築からエラー対応、テンプレートタグの仕様についての説明まで幅広く対応してくれます。
Movable Typeのデメリット
一方で、Movable Type利用時のデメリットもいくつかご紹介します。
商用利用では有償
Movable Typeは個人利用などの一部を除き、基本的に有償のツールです。ライセンス契約費が常に発生するため、コスト感に見合った導入となるかを慎重に検討する必要があります。
プラグインの数が少なく拡張性に劣る
プラグイン数がWordPressと比べて少なく、拡張性に劣ります。また、プラグインごとにライセンス契約が必要となるケースも多く、プラグインを存分に活かしたカスタマイズは難しいです。
まとめ
Movable Typeは、国産CMSとして長年支持され続けているツールです。
拡張性はオープンソースのWordPressと比べると劣るものの、企業が提供しているツールなだけあってセキュリティ面でのリスクは低く、サポート体制も充実しています。
大規模サイトや複数サイトの運営にも向いているツールであるため、これからWebサイト制作にあたる場合はWebサイトの性質と照らし合わせて、Movable Typeの導入を検討してみてはいかがでしょうか。