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クラウドとは?
クラウドは、サーバー環境やソフトウェアがなくてもインターネットを通じてユーザーにサービスを提供する形態のことです。クラウドは英語の「cloud(雲)」に由来しています。
インターネット黎明期にはネットワークを雲で表すことが一般的で、雲の中に隠れたサービスを利用する形態から、現在の呼び名になったとされています。このクラウド上にデータを保存し運用することを「クラウド化」と呼びます。
総務省の発表によると年々導入している企業は増えており、現在クラウドを一部でも利用している企業は68.7%にのぼります。7割近くの企業が導入するほど一般的になっているサービスといえるでしょう。
クラウド環境の違い
クラウド環境は、主に以下の3つに分けられます。
クラウド環境の種類
- パブリッククラウド
- プライベートクラウド
- ハイブリッドクラウド
パブリッククラウド
パブリッククラウドは、企業や個人を問わず、オープンな形で提供されるクラウドです。幅広いユーザーに利用されており、このパブリッククラウドを一般的なクラウドのイメージとして認識している方も多いでしょう。
導入に際してアプリケーションやシステムの構築もほとんど必要なく、アカウントさえ作ればすぐに利用できます。保守管理の手間も必要ありません。また、オープンなリソースを共有・シェアしているため、安価かつ簡単に導入できます。
プライベートクラウド
プライベートクラウドは、クローズドな「自社専用のクラウド環境」といえます。パブリッククラウドが比較的オープンな形であるのに対し、プライベートクラウドは物理的なリソースを他者と共有しません。
自社でクラウドを構築できることからカスタマイズ性が高く、クローズドなシステムなのでセキュリティの高さも特徴です。その分コストが高く、リソースの追加や削除に時間がかかるという面もあります。
ハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドは、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたものです。
機密性が高くクローズドな情報を扱うサーバーはプライベートクラウド、外部に公開するWebサーバーはパブリッククラウドといったように、用途や情報の質によって環境を使い分けられます。これにより、処理能力の向上やストレージ容量を変えられる柔軟性が得られます。
また、プライベートクラウドはセキュリティが高い分、導入費用がかかります。しかし、機密性の低いオープンな情報はパブリッククラウドを使うようにすれば、コストを抑えることも可能です。
サービス形態の違い
クラウドには、以下の3つのサービス形態があります。
クラウドサービスの形態
- SaaS
- PaaS
- IaaS
それぞれ説明していきます。
SasS
SaaSは、アプリケーションやソフトウェアをクラウド上で利用できるサービスです。「ソフトウェア・アズ・ア・サービス」の略称で、SaaS(サース)と読みます。
ネットワークを経由してソフトウェアを提供するサービスで、例としてGoogleマップやYahoo!メールなどが挙げられます。
ソフトウェアパッケージの購入やインストールをせずに、必要な機能だけを選んで利用可能です。カスタマイズの自由度は低いですが、その分簡易的に設計できます。
PaaS
PaaSとは、開発環境をクラウド上で提供するサービスです。「プラットフォーム・アズ・ア・サービス」の略称で、PaaS(パース)と読みます。
インターネットを介してアプリケーションを作動させるためのハードウェアやOSなどを揃えることができます。
アプリケーション開発に必要な一式が内包されているので、システムの開発環境を構築する手間がかからず、手軽に環境基盤を調達することができます。「AmazonのAWS」や「MicrosoftのMicrosoft Azure」などが有名です。
IaaS
IaaSは、システムの稼働に必要なサーバーやネットワークなどを利用できるクラウド上で提供するサービスです。インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスの略称で、IaaS(イアース)と読みます。
従来の開発では、自社で情報システムのインフラを購入や構築する必要がありました。しかし、IaaSであればネットワーク上からサーバーやOSを選択して利用できます。
他の2サービスと比べて自由度が高い分、カスタマイズには専門知識が必要です。IaaSの具体例として「Google Compute Engine™️」があります。
クラウドのメリット
クラウド導入のメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
クラウド導入のメリット
- 導入コストが安く済む
- 導入スピードが速い
- 外部からのアクセスも可能
- 運用管理の負担が少ない
導入コストが安く済む
クラウドは端末とインターネット環境を用意し、サービスに申し込むだけで利用できます。そのため、サーバー・周辺機器の購入費用やシステム開発費用などが不要です。
自社サーバーを保有すると専門スキルを持つ担当者が必要で、人件費がかかります。しかし、クラウドを導入すれば、サーバーを稼働させるための維持費、運用・監視する人件費を減らすことができます。
クラウド導入でかかる費用は、基本的にはサービス利用にかかる定額料金のみです。
導入スピードが速い
クラウドは、すでにサービス提供者により完成されているシステムです。
自社でシステムを開発すると、開発期間やテストなどにより、実際に利用できるまで数ヶ月はかかります。その点クラウドは、既製品を購入して導入する形になるので、契約後にすぐに利用できます。
スピード感が大切なビジネスにおいて、導入まで迅速なことは大きなメリットです。試しに導入するにしても時間がかからず、自社に適していない場合はすぐに辞められます。
外部からのアクセスも可能
PCやタブレット、スマホなどの端末とインターネット環境があれば、外部からでもアクセス可能です。自社サーバーの場合、基本的に外部からのアクセスはできませんが、クラウドを利用していればどこでもデータを共有できます。
昨今の情勢でリモートワークが増えている状況を鑑みても、インターネットを通してどこでも情報共有ができるのは、大きなメリットといえるでしょう。
運用管理の負担が少ない
クラウドの管理やメンテナンスは基本的にクラウドシステムのサービス提供者が行うため、システム運用管理に関する自社の負担は軽減されます。
データのバックアップやセキュリティのアップデートなど、システムの運用管理は大切です。しかし負担が大きいため専任のスタッフをおかなければならず、費用と手間がかかります。
クラウドではシステムの運用管理をクラウドサービスの提供者が行うため、自社スタッフの管理の負担はかなり削減されるはずです。
クラウドのデメリット
クラウドの導入は、運用の手間やコストの削減などに繋がり、メリットが多いです。しかし、少なからずデメリットも存在します。デメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
クラウドの導入のデメリット
- カスタマイズに制限がある
- 安定したネット環境が必須
- サービス会社に依存する
カスタマイズに制限がある
クラウドは、サービス事業会社が決めたOSや仮想化環境などを利用してシステム設計されており、提供されたサービスの範囲でしかサービス環境を作れないため、カスタマイズに制限があります。
既存サービスをもとに設計するので導入スピードが速い分、独自のカスタマイズが難しい点には注意が必要です。
安定したネット環境が必須
サービス提供元のサーバーにインターネット経由でアクセスするので、オフライン環境では利用できず、安定的なネット環境が必要です。
ネット環境があっても接続が不安定であったり、回線速度が遅かったりすれば、業務に差し支えるでしょう。さらに、社外でPCから利用する場合は、モバイルWi-Fiを持ち歩く必要があります。
クラウド化の導入には整備されたネットワーク環境が必要なので、考えてから導入しなければなりません。
サービス会社に依存
クラウドはサービス会社にシステム運用をお任せできる代わりに、自社の裁量で行える部分が少なくなります。
仕様変更で使いにくくなったり、月額料金が上がったりしても、自社ではどうすることもできません。サービス提供会社側のサーバーで問題があった場合、社内システムが停止してしまうリスクもあります。
自社のデータ管理システムが、サービス提供会社の状況次第で左右されてしまうので、サービス会社に依存する状況が発生してしまいます。
オンプレミスとの比較
クラウド導入を検討する際、よく比較されるのが従来型のオンプレミスです。
「オンプレミス」は自社運用システムのことで、自社でサーバーを構築し、情報システムに関する部署で導入から維持管理までを行います。導入コストは高いですが、その分カスタマイズ性が高いという特徴を備えています。
前述したように、クラウドを導入する企業が全体の7割近くを占め、オンプレミスからクラウドへの移行が加速しつつある傾向にあります。
しかし、クラウドとオンプレミスにはそれぞれ特徴・メリットがあり、クラウドが一方的に優れているというわけではありません。以下の比較表も参考にしてみてください。
クラウド | オンプレミス | |
---|---|---|
コスト | ・初期費用が必要ない ・定額料金+従量課金制なので必要以上の料金は掛からない | ・サーバー機器の購入や開発に費用がかかる ・拡張の際に費用が発生する |
導入スピード | ・申し込みからサーバーの立ち上げまで、1日もかからない | ・開発から導入まで数ヶ月を要することもある |
障害対応 | ・サービス提供元が障害対応をする | ・自社スタッフで障害対応をする必要がある |
バックアップ | ・クラウドによっては、バックアップ機能を搭載しているところもある | ・検証環境やバックアップ環境を新たに導入する場合、コストと時間がかかる |
カスタマイズ性 | ・クラウドサービスによってカスタマイズできる範囲とできない範囲がある | ・ローカル環境でシステムの構築・運用が安心してできる |
容量拡張 | ・契約内容を変更するだけで容量が拡張できる | ・容量拡張には高額な費用と手間がかかる |
自社システムとの連携 | ・互換性がない場合がある | ・問題なし |
クラウドを選ぶ時のポイント
クラウドを選ぶ際のポイントを2つ紹介します。
1:ランニングコストを考える
ランニングコストについても確認しましょう。サービス導入時のコストは安価でも、運用で他にかかるコストを考えたときにトータルで高くなってしまっては意味がありません。
AWSのようなクラウドサービスは定額ではなく、使った分だけ加算されていく仕組みなので、長期的な費用の予測が立てにくいかもしれません。
クラウドの導入を検討する際は、導入時のコストだけでなく「どれくらい機能を必要とするか」「どれくらい使うか」も考慮して決めましょう。
2:サービス提供会社の実績を見る
サービス提供会社がどんな会社にサービスを提供しているか、導入実績を確認しましょう。
導入実績は、信頼性を図る上で重要な判断材料です。実績が少ない会社のサービスは、セキュリティ対策が弱かったり、ランニングコストが高かったりと、他社が導入しない理由がある場合が多いです。
なるべく、豊富な実績があるサービス提供会社を選ぶようにしましょう。
脱クラウドの企業もある?
脱クラウド、すなわちオンプレミス型に移行する企業もあります。理由はさまざまですが、主に以下の3つが挙げられます。
- 予想以上にコストが高くなってしまった
- データ処理のパフォーマンスが低い
- 強固なセキュリティ構築に限界がある
クラウドは安価で手軽にシステムを構築できますが、その分デメリットもあるため、クラウド導入が必ず正しいとは限りません。
導入を検討する際はそれぞれのメリットとデメリットの両方を把握した上で、どちらが自社にとって都合がよいのか考えましょう。
まとめ
クラウドは、安価なコストやどこでも利用できるなどのメリットにより、年々導入する企業が増えています。その分、導入にはネット環境の整備が必要である、カスタマイズ性が低いなどのデメリットもあります。
また、導入コストが低くても、長期的に考えるとコストが高くなってしまう可能性もあります。
自社がどんなシーンでどれくらい利用するのか、状況と照らし合わせた上で導入に進みましょう。