目次
Webサイト戦略とは
「Webサイト戦略」とは、Web制作の際に「誰に向けたものなのか」といった方向性や、目標に向けてのプランを決めることです。
戦略を練ることにより、目標達成のための全体図が把握でき、各施策を行っていく際の方向性を見失うことがなくなるため、各施策の効果を出せる可能性を大幅に広げられます。
「これからWebサイトを作る方」や「Webサイトをリニューアルする方」は、Webサイト戦略なしでは目標にたどり着くことは難しいでしょう。
Webが担う役割の変化
Webが広がり始めた2000年代初頭は、まだWebサイトの存在自体が特別であり、企業サイトには自社の「名刺」や「カタログ」といった役割しかありませんでした。
しかし、Webマーケティングが普及した現在は、「自社サイトをいかに競合より多く見てもらうか」や「いかにビジネスの成果に繋げられるか」をそれぞれの企業が考えるようになっています。
Webサイトは「訪問数」や「滞在時間」などを正確に計測できるため、マーケティングとの相性が良く、PDCAサイクルによるWebサイトの継続的な改善が急速に拡大しました。
自社に利益を生むための投資の対象としてWeb制作が位置づけられたことで、Webマーケティングの重要性は今まで以上に増しています。
Web戦術との違い
Web戦術とは、Web戦略を練った後の、掲げた目標やゴールに近づくための具体的な手段のことです。
Web戦略が「目的地までの地図を描くこと」であれば、Web戦術は「目的地までどういう手段で行くのか」といった具体的な方法を指します。一般的な施策の一部は、下記の通りです。
- サイト制作・リニューアル
- SEO(検索エンジン最適化)
- WEB広告・SNS広告・リスティング広告
- メールマーケティング
- コンテンツマーケティング
- ウェビナー
これらのWeb戦術は、Web戦略をもとに「何を」「いつ」「どれくらい」行なうかを考え、結果を予測することが大切です。Web戦術を行うにあたって、Web戦略は基礎となるため、その上で改善と効率化を図っていきましょう。
Web戦略が必要とされる3つの理由
Web戦略が必要とされる理由を、下記の3つに分けて紹介します。
- Web市場のさらなる拡大に対応するため
- 効果が高い施策を特定して改善に注力するため
- マーケティング活動を効率化するため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Web市場のさらなる拡大に対応するため
近年はスマートフォンやパソコンからインターネットを利用できる環境が広がっています。「オンラインサービス」や「ECサイト」への流れは今後も加速することが予想されることから、企業はWeb市場の拡大に対応していかなければいけません。
企業は適切な施策を行なうことによって、場所や時間にとらわれない長いスパンで、顧客との関係を築くことが可能になります。
効果が高い施策を特定して改善に注力するため
Webマーケティングでは、アクセス解析ツールを利用し、施策に対しての顧客の反応を数値化して計測します。よく計測される項目は下記の4つです。
- アクセス数
- ページビュー数
- 購入者数
- 滞在時間
さらに、Web戦略をもとに各施策の目標数値を設定し、効果が高い施策を判別することで、その施策に注力した活動に取り組めます。
効果のない施策の原因を見つけ出して改善するきっかけも得られるため、顧客の求めるものが今まで以上に判別しやすくなるでしょう。
マーケティング活動を効率化するため
Web戦略が必要とされる理由の3つ目は、ターゲットを絞ってマーケティング活動を効率化するためです。
今までの戦略では「広告・チラシ」や「コマーシャル」といった不特定多数をターゲットにしていました。しかし、これからは、一人ひとり異なるニーズに合わせたアプローチが必要です。
Web戦略でターゲットの属性(職業・性別・年齢など)を明確にし、それに合わせたピンポイントな情報発信をすることで、より効率的なマーケティング活動が行えるようになります。
Web戦略の策定手順は7ステップ
Web戦略の策定手順は、下記の7ステップです。
- ゴールを設定する
- 外部環境や内部環境の現状を分析する
- 対象となるターゲットを決める
- カスタマージャーニーを作成する
- 取り組む施策を選定する
- 施策ごとにKPIを設ける
- 施策の予算とスケジュールを決定する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Web戦略の最終的な目標となる「KGI」を設定しましょう。
「KGI(Key Goal Indicator)」とは、日本語では「重要目標達成指標」といい、企業のビジネスの戦略を達成するために、何をもってゴールなのかを示すものです。
たとえば「一年間のWeb経由の売上を〇〇円伸ばす」などの具体的な設定がKGIに当たります。なるべく「%」は使わずに、金額や件数などで示すほうがわかりやすいでしょう。
ゴールが設定できたら、次は外部環境や内部環境の現状を分析しましょう。外部環境の分析に活用できる分析方法は、次の3つです。
- ファイブフォース分析
- PEST分析
- SPT分析
内部環境の分析には、以下4つの分析方法を用いるとよいでしょう。
- SWOT分析
- 4P
- 4C
- VRIO分析
これで自社の強みを把握できます。外部環境と内部環境を十分に理解して、競合との差別化を図りましょう。
現状の分析をしたら、Web戦略を練るためのターゲットを決めていきます。
内部環境の分析によって自社の商品やサービスに興味を持っているユーザーが、どのような人物なのかを絞ることができているため、そのデータを活用しながら設定するとよいでしょう。
人物像をより明確にするには、ペルソナ(人物像)設定がおすすめです。ペルソナを設定することによって、効果的なアプローチの方法などが見えてきます。
対象ターゲットおよびペルソナを設定したら、ユーザーの行動を知るために「カスタマージャーニー」を作成していきましょう。「カスタマージャーニー」とは、ペルソナの感情や思考を可視化したものです。
カスタマージャーニーを作成すれば、ユーザーが自社を知った経緯を把握できるため、適切なタイミングで自社のサービスを伝えられます。
これまでのステップを踏まえながら、実際に取り組む施策を選定します。
たとえば、「認知・集客」であればサイト運営や動画、SNS運用、インターネット広告などが有用ですし、「育成・成約」であればメルマガやLINEメルマガなどが有用です。
リピーターを増やしたいのであれば、SNSやクーポン、クーポンといった施策を行うとよいでしょう。このように、カスタマージャーニーマップを参考にしながら、どの施策に注力すればいいのかを考えることが大切です。
施策が設定できたら、KGIをWebマーケティング施策ごとの「KPI」に落とし込んでいきましょう。
「KPI(Key Performance Indicator)」とは、日本語で「重要業績評価指標」といい、目標を達成する上で、その達成度合いを見るための定量的な指標を意味します。
「KPI」は下記のように設定します。
- KGIを達成に向けて必要なコンバージョン数を算出
- 各施策の上限CV(コンバージョン)数を仮定
- 効果が高いと予測される順にKPIを割り振る
施策ごとのKPIはコンバージョンの上限によって異なるため、現状の分析結果をもとに数値を出しましょう。
最後に、施策の予算とスケジュールを決めていきます。予算は、施策ごとの「想定CPA×KPI」から設定します。
「CPA(Cost Per Action)」とは、日本語で「顧客獲得単価」のことをいい、CV(コンバージョン)1件あたりにかかった広告費用のことです。たとえば、Web施策の合計予算が6,000,000円の場合は下記のようになります。
- 想定CPA:5,000円
- KPI:1,200CV
予算が決まったら、施策開始後の「KPIのスケジュール」を作成します。ただし、SEOの効果はすぐには出ないため、SEO施策を始めた月からKPIを高めに設定すると、目標を達成できない可能性があります。
したがって、施策効果が出る時間を考慮してスケジュールを組まなければなりません。
「現状分析」に活用できる4つのフレームワーク
「現状分析」に活用できる、4つのフレームワークを紹介します。
- SWOT分析
- 3C分析
- PPM分析
- 5Forces(5F分析)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
SWOT分析
SWOT分析とは、1970年代頃に構築された経営資源の最適化のための戦略策定方法の一つです。SWOT分析では「内部要因」「外部要因」を下記の4つのカテゴリーに分けています。
- 強み(Strengths)
- 弱み (Weaknesses)
- 機会 (Opportunities)
- 脅威 (Threats)
強み・弱みは、企業の内部要因を客観的に洗い出すとよいでしょう。競合他社を相対評価して分析するのもおすすめです。機会・脅威といった外部要因は、景気や経済、社会・業界動向などを洗い出すことで明らかにできます。
要素を客観的に洗い出し、自社を俯瞰的に見ることで、目的に対して自社がどの立場にあるのか、市場にチャンスは残っているのかといった意思決定に役立てられます。
3C分析
3C分析とは、競合相手や自社の各要素を調査することで、現状を把握する分析方法です。3Cとは、下記の3つの頭文字からきています。
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3C分析はフレームワークがシンプルであるため、自社を取り巻く業界の状況を整理するのに最適です。
PPM分析
PPM分析とは、1970年代に米大手のコンサルティング会社が考案したフレームワークで、自社の経営資源の注力先、配分の検討に利用できる分析方法です。
PPM分析では、「市場成長率」と「市場占有率」を計算し、下記の4つに分けていきます。
- 問題児(将来性に期待できるものの伸び悩んでいる事業)
- 花形(利益を生み出し成長を続けている事業)
- 金のなる木(安定した地位を築き予測通りの業績を出せる事業)
- 負け犬(利益が見込めず将来性もない事業)
たとえば、問題児であれば「価値観を揺さぶるような提案型のサイト」の作成、負け犬であれば「Webサイトの閉鎖やサービスそのものの撤退」というようにWeb戦略の転換に繋げられます。
5Forces(5F分析)
5Forces(5F分析)とは、企業の競争要因を分類し、業界構造を分析するフレームワークです。5Forcesは、下記の5つの要素に分類できます。
- 新規参入者
- 競争者
- 代替品
- 買い手
- 売り手
「施策立案」に活用できる2つのフレームワーク
施策立案に活用できるフレームワークは下記の2つです。
- 4P/4C分析
- STP分析
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4P/4C分析
4P分析とは、マーケティングミックスとも呼ばれており、企業側から顧客にアプローチする方法を考えるフレームワークです。主に下記の4つの要素に分けられます。
- Product(顧客がよいと感じる商品)
- Price(品質に見合った価格)
- Place(顧客が購入しやすい販売網の構築)
- Promotion(商品の宣伝)
4C分析とは、顧客目線でマーケティング戦略を考える分析方法です。4つの観点から自社サービスを見直す時に使用します。
4つの観点としては以下が挙げられます。
- Customer Value(商品が顧客にとって価値のあるものか)
- Cost(購入時の顧客負担・コスト)
- Convenience(商品購入によって生まれる顧客の利便性)
- Communication(商品の情報・魅力を見つけやすいか)
STP分析
STP分析とは、4P・4Cよりも細かく分析するフレームワークで、主に3つの要素に分かれています。
3つの要素は次の通りです。
- Segmentation:市場の中にいる顧客と類似するニーズ別に分けて市場の細分化する
- Targeting:細分化した顧客層からターゲットを絞り込み標的の市場を決定する
- Positioning:自社商品と競合商品を比較して市場での自社の立ち位置を明確にする
1つの商品ですべてのニーズを満たすことはできません。効率的に商品を訴求していくためには、勝負する市場と訴求するターゲットを決めた上で、効果的なアプローチ手段を決定していく必要があります。
これらを決めていく際に有効な分析方法が「STP分析」です。
まとめ
Web戦略という言葉に馴染みのないという方は多いでしょう。Web運用が当たり前でなかった企業だと、気軽に導入できないかもしれません。
しかし、スマートフォンやパソコンが普及し、誰でも簡単にインターネットを利用できるようになった現代では、今後もオンラインが普及し、Web市場が拡大することが予想されます。
企業の優位性を維持・向上させていくためには、Web戦略は欠かせません。Web戦略を上手く導入して、Web市場の優位性を高めていきましょう。