Web制作における契約の種類
Web制作における契約には、以下の2種類があります。
- 請負契約
- 準委任契約
ここではそれぞれの詳細を解説していきます。
請負契約
請負契約とは、受注者の納品物に対して発注者が報酬を支払う契約です。受注者が発注者に委託された仕事を完成させることを目的としています。
請負契約で受注者からの途中解除は行えず、依頼された仕事を完成させる義務があります。もし完成できなかったり、発注者の要求を満たしていなかったりする場合は、契約解除や修繕要求、損害賠償請求が発注者により行われる可能性があります。一方で、発注者は途中解除が可能です。
準委任契約
準委託契約は、受注者が発注者に委託された仕事を善管注意義務(社会的な地位を考慮し、一般的に要求される注意義務)に基づき遂行することを目的としています。
準委任契約の報酬支払い方法は「履行割合型」「成果完成型」の二種類があります。履行割合型は、発注した仕事の遂行にかかった工数、作業時間を基準にした支払い方法です。成果完成型は、発注した行為が完了した場合に報酬が支払われます。発注者・受注者ともに途中解除が可能ですが、再委託は原則不可です。
Web制作における契約書のチェックが必要な3つの理由
Web制作で契約書チェックが必要な理由は、以下の3つが挙げられます。
- 想定外の追加料金を請求される可能性がある
- 知らない間に納品完了となるケースがある
- 不具合の修正に対応してもらえない場合がある
Web制作を発注する際に重要な情報ですので、必ずチェックしておきましょう。
1.想定外の追加料金を請求される可能性がある
契約書をチェックする場合、「作業範囲」をよく把握しておきましょう。追加料金が発生する例には、以下のようなものがあります。
- コンテンツ完成後、サイトの公開をお願いしたら追加料金を請求された
- サイト内の画像選定は別途料金が必要だと言われた
Web制作の作業内容は工程が多く、契約書に全ての内容が網羅しきれていない場合もあるでしょう。この場合、見積書に記載がある可能性があるため、見積書のチェックも重要です。
2.知らない間に納品完了となるケースがある
契約書には修正回数の上限、納品後の修正対応期間などが決められていることがほとんどです。業務が忙しくWeb制作会社からの連絡に返信していないと、その間に確認期間が過ぎて修正が不可能になり、知らない間に納品完了になる場合があります。
契約書に「修正は4回まで」と書かれていた場合、規定を超えて修正を依頼すると断られたり追加料金が発生したりしますので注意しましょう。
3.不具合の修正に対応してもらえない場合がある
Webサイト公開後に不具合を発見した場合、Web制作会社に修正を依頼する必要があります。しかし契約書に「不具合修正は公開後3ヶ月間のみ」のように、期日が設けられていた場合、期限を過ぎると対応は期待できません。
仮にWeb制作会社のミスであっても、期日までに確認しないと追加料金が発生する恐れがあるため、契約書のチェックは必要不可欠です。
Web制作の契約書で確認すべき10のポイント
Web制作の契約書で確認すべきポイントは、以下の10つが挙げられます。
- 案件の作業範囲
- 検収に関するルール
- 制作費の支払時期
- 所有権や著作権の帰属先
- 遅延損害金とその利率
- クライアント都合による解約時の支払い
- 契約不適合責任について
- 損害賠償に関する条項
- 対応するブラウザの種類
- 秘密保持の条項
ここではそれぞれの詳細を見ていきましょう。
ポイント1.案件の作業範囲
契約書に「サイトのデザイン、バナー作成、ソースコードの制作」と書かれていた場合、それ以外の作業は作業範囲外です。
そのため、契約書に書かれていない画像選定やレンタルサーバー、ドメインの用意、公開設定などの作業は自社で行う必要があります。
作業範囲外の作業も依頼したい場合は別途契約を結び、追加料金の支払いが必要です。後々追加料金を払わないためにも、あらかじめ作業範囲をしっかりチェックしておきましょう。
ポイント2.検収に関するルール
成果物が納品された後は検収が必要です。契約書には基本的に「納品の連絡から〇日以内」と、検収目安が記載されています。期間が過ぎると自動的に納品完了となり、その後の対応は別途費用がかかる可能性があります。
期日の確認はもちろん、その日数で検収可能かどうかもチェックが必要です。業務が忙しい場合、既定の日数で確認しきれない可能性も考えられるため、できるだけ余裕を持った期日を設定すると良いでしょう。
ポイント3.制作費の支払時期
契約書には制作費の支払時期についても記載されています。
支払い期限を過ぎるとWeb制作会社との間にトラブルが発生し、関係が悪化する可能性もあります。事前に支払い時期を確認し、遅れないように支払い手続きを行いましょう。
ポイント4.所有権や著作権の帰属先
Web制作で成果物納品後にトラブルになりやすいのが、所有権や著作権の問題です。
- 所有権:成果物を保有・処分・売買する権利
- 著作権:成果物を変更・利用する権利
所有権があれば、サイトを自由に使用できるのはもちろん、売買も可能です。しかし著作権が制作者側にある場合、デザインや画像を勝手に変更すると著作権侵害になります。
制作会社によっては、契約書に例外条件を含めている場合があります。制作会社のサイトで制作実績として紹介する、プログラムなどの仕組みを他社案件で使うなどが考えられます。例外条件に応えたくない場合は、契約前に制作会社との協議が必要です。
ポイント5.遅延損害金とその利率
遅延損害金とは、制作会社側への支払いが遅れた場合に請求される賠償金を指します。
遅延損害金の利率には「約定利率」と「法定利率」があります。約定利率は当事者間で合意した利率のことを指し、これを定めていない場合、法定利率(年3%)が適用されます。
契約書に記載がない場合は年3%ですが、発注者側に不利な利率が契約書に書かれている場合もあるため、しっかりと確認しましょう。
ポイント6.クライアント都合による解約時の支払い
Web制作会社に仕事を依頼したのにもかかわらず、自社都合により途中解約せざるを得ないことがあるかもしれません。
自社都合で解約すると制作会社が損をするため、契約書にはクライアント都合による解約時の支払いについて記載されています。途中解約も想定した上で、解約時の条件や支払いについてもチェックしましょう。
ポイント7.契約不適合責任について
契約不適合責任とは、事前に目的物に対して取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に沿わない引き渡しをおこなった場合に、売主側で負担する責任を指します。令和2年4月1日に実施された改正民法以前は瑕疵担保責任の範疇として、買主は売主に対して原則、契約の解除または損害賠償請求のみが可能でした。
一方、契約不適合責任では契約の解除・損害賠償請求だけでなく、目的物の修補・代替物や不足分の引渡し請求といった「履行の追完請求(完全なものを引き渡すように求めること)」と、「代金減額請求」が可能です。
ポイント8.損害賠償に関する条項
サイト制作中や納品後のトラブルが起きた時の対応は、損害賠償の内容によって変わります。どのような場合に損害賠償できるのか、請求額やその上限はいくらなのかを確認しましょう。
損害賠償に関する条項が明確でない場合、損害賠償に応じてもらえないケースもあります。万が一のトラブルに備えて、損害賠償の項目をチェックしましょう。
ポイント9.対応するブラウザの種類
Web制作会社が作成したWebサイトが、表示ブラウザによっては崩れてしまう場合があります。そのため、どのブラウザでWebサイトを適切に表示させたいのかをあらかじめ決めておきましょう。
完成後に特定のブラウザで表示が崩れることが発覚し対応を依頼した場合、別途追加費用が発生することがあります。
ポイント10.秘密保持の条項
秘密保持とは、相手の社外秘となる情報を漏洩・利用しないことを約束するものです。Webサイト制作途中には社外秘はもちろん、非公開情報も取り扱う場合があります。
こういった情報を安全に取り扱ってもらうために必要なのが秘密保持の契約です。秘密保持契約は発注者側だけでなく、制作会社から求められる場合もあります。
まとめ
Web制作を初めて依頼する場合、今回紹介したポイントを押さえ、契約書の項目一つひとつを確認しましょう。
契約書のチェックを怠ると、後々トラブルに発展する恐れもあるため、できる限り入念なチェックをおすすめします。Web制作の依頼によるトラブルを避けるためにも、納得できる契約書を結ぶようにしてみてください。