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オウンドメディアの目的と成功とは?
「オウンドメディアはあまり意味がない」「オウンドメディアは効果が期待できない」といった声を聞くことがありますが、たしかに、ただやみくもに運営するのではそういった結果を招いてしまうかもしれません。
オウンドメディア運営の成功の鍵は、運営するメディアにどのような目的を持たせるかにかかっています。
オウンドメディアは、運営元の企業によって達成したい目的は異なりますが、事業や採用課題を解決する手段として運用されているケースが多いです。主な運営目的としては、以下の4つが挙げられます。
オウンドメディア運営の目的
- リード獲得
- 自社サービスのCV
- 採用活動
- 認知拡大とブランディング
自社が抱える課題の解決や目的を達成するために、サービスや商品、自社の特徴などをオウンドメディアで正しく発信することで、採用や事業拡大に導いていくことができます。
4つの目的を達成すると、具体的にどのような成果を得ることができるのでしょうか。詳しく解説していきます。
リード獲得
オウンドメディアは、リード(見込み顧客)を獲得するために運用されるケースが多いです。
さまざまな情報が溢れる現代において、企業がより信頼を得るためにユーザーに発信できるコンテンツの一つがオウンドメディアです。
自社商品の詳細や、ターゲットとなるユーザーが知りたい有益な情報を発信することで、リードの獲得に繋げることが可能です。
掲載コンテンツが検索上位に表示されると、多くのユーザーがサイトにアクセスしてくれるようになるため、集客には最適な方法だといえるでしょう。
自社サービスのCV
オウンドメディアは、収益化に繋がる構成になっていないことが多く、一般的にCV(コンバージョン)に結びつけるのは難しいといわれています。
しかし、構成やコンテンツなどを改善することで、オウンドメディアでもマネタイズは十分に可能です。
たとえば、記事や動画などのコンテンツを用意し、自社商品やサービスの紹介やブランディングに繋げることで、ユーザーの興味や関心を促すことができます。
コンテンツを通して、ユーザーはより深くまで商品やサービスを知ることができ、コアなファンへと成長してくれるでしょう。
採用活動
近年では、採用を目的にオウンドメディアを運用する企業が増えています。
求職者は、応募を検討している会社の情報を、必ずといっていいほどインターネットで調べます。その際、求職者が得られる情報は多いに越したことはありません。
公式サイトだけでは伝えきれない企業の魅力を、求職者に向けて発信する必要があるため、オウンドメディアによる採用活動が活発化しています。
認知拡大とブランディング
オウンドメディアの運用は、企業のブランディングにも効果的です。ブランディングとは、ターゲットユーザーにとっての企業価値を高めるためのマーケティング戦略です。
自社商品やサービスだけでなく、企業理念や想いなどをオウンドメディアで発信していくことで、ユーザーの理解と共感を得ることができ、コアなファンの獲得へと繋がります。
【BtoB】オウンドメディアで成功している企業・事例紹介
BtoB企業がオウンドメディアを運用する目的として、リード獲得や自社事業への貢献などが挙げられます。
BtoBはBtoCよりWebでの展開が少ない傾向があるため、オウンドメディアを運営することにより、競合よりも自社の強みやサービスが伝わりやすいメリットがあります。
BtoCのオウンドメディアにもいえることですが、「誰」に向けて情報を発信をするのか、ターゲットを明確にすることが大切です。
今回はBtoB企業のオウンドメディアの成功事例を、次の2つに分けて紹介します。
- リード獲得
- サービスCV
それぞれの成功事例を見ていきましょう。
リード獲得
株式会社ベーシック
「ferret」は、株式会社ベーシックが運営しているBtoB向けのオウンドメディアです。主に「SEO」「SEOマーケティング」「Web広告」といった、マーケティング関連のコンテンツを掲載しています。
「マーケターのよりどころ」というコンセプトをもとに、マーケティングに関する知識やノウハウといった、ターゲットであるマーケターやマーケティング初心者に響くコンテンツを発信することによって、リード獲得に大きく繋げています。
また、ferretに会員登録すると、マーケティングを基礎から体系的に学ぶことができます。マーケティングに関する初心者の悩みを解消する環境を用意したことが、ferretが成功した理由だといえます。
株式会社ベーシックは、ferretの改善を繰り返しコンテンツ作りに注力したことで、月間UU300万人、月間PV550万人を達成しています。
HubSpot Japan株式会社
「HubSpot ナレッジベース」は、CRM(顧客関係管理)ツールを開発・販売するHubSpotが運営するオウンドメディアです。
HubSpotに関する疑問をカテゴリ別に閲覧できるメインコンテンツのほか、マーケティングに関する知識や自社のノウハウを発信するコンテンツ「HubSpot ブログ」も用意されています。
サイト名にHubSpotを入れることでサービスのブランディングに繋げたり、ダウンロードコンテンツを多数用意することでCVに繋げたりと、リード獲得に力を入れています。
サイボウズ株式会社
株式会社サイボウズが運営している「サイボウズ式」は、働き方に関するテーマを中心としたオウンドメディアで、自社サービスや取り組みについて多くの人に知ってもらうことを目的としています。
「新しい価値を生み出すチームメディア」をコンセプトに、サイボウズに勤める社員の気づきや社外の方へのインタビュー記事といったコンテンツが中心に掲載されており、読みやすさや面白さに定評があります。
コンテンツ作りに力を入れているため記事の質も高く、社員や社外の人のリアルな声を聞くことができるので、自社の認知向上に成功しています。
サービスCV
株式会社ベネフィット・ワン
「ボーグル」は、官公庁や企業への福利厚生サービスの導入や代行をサポートする株式会社ベネフィット・ワンが運営しているオウンドメディアです。
「企業の働き方改革はわかるからやってみるへ」というコンセプトのもと、2017年6月から運用されています。
ボーグルは、労働生産性の向上をサポートする福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」のリード顧客の獲得を目的にしています。
検索上位に表示されるように「働き方改革」「ワークライフバランス」「福利厚生」「健康経営」「従業員エンゲージメント」「人材育成」といったカテゴリごとに記事を分類し、企業が知りたい必要な情報を適切に発信するようにしています。
この施策の結果、コンテンツの品質が非常に高いこともあり、多数の問い合わせへ繋げることに成功しています。
株式会社マネーフォワード
株式会社マネーフォワードが運営する「Bizpedia」は、確定申告や人事労務などバックオフィスに関する情報を発信しているオウンドメディアです。
企業で会計業務をしている人や個人事業主など、働くすべての人をターゲットとしています。画面下部に、サービス資料のダウンロードページやリンクなどのCTAを追従配置することによって、問い合わせに繋げる仕組みになっています。
また、働き方インタビューや動画を配置することにより、ユーザーがより理解しやすいコンテンツになっているのもポイントの一つです。
【BtoC】オウンドメディアで成功している企業・事例紹介
BtoCのオウンドメディア成功事例は、次の2つに分類して紹介します。
- リード獲得・サービスCV
- 採用活動
それぞれの成功事例を見ていきましょう。
リード獲得・サービスCV
株式会社クラシコム
株式会社クラシコムが運用している「北欧、暮らしの道具店」は、ECサイトとメディアを組み合わせたおしゃれなECメディアです。
北欧テイストが好きなユーザーをターゲットにしており、家具や雑貨の商品紹介や、暮らしに関するライフスタイル記事を中心にコンテンツが作られています。
単純な商品スペックの紹介に終始せず、購入検討者が具体的に利用シーンをイメージできるような、記事型の商品紹介が特徴です。
また、実際にスタッフが愛用している商品や、着用レビューといったコンテンツを通してユーザーに親近感を持たせる工夫がされており、多くのファンを獲得しています。
株式会社BAKE
「THE BAKE MAGAZINE」は、2015年5月に運営が開始された、株式会社BAKEのオウンドメディアです。
製菓業界に留まらないオープンイノベーションをテーマに掲げ、ビジネスアイデアや食の業界についての情報を発信し、BAKEを大きくしていくことを目的にしています。
コンテンツとしては、自社商品やお菓子に関する情報、「食」に関連した生産者や事業者のインタビュー記事などが発信されています。
たとえば「お菓子工場の工場長って、どんな仕事?」「森永乳業のマーケティング担当に聞く、お客さまの心をつかむ新商品のつくり方」といった記事があります。
レッドブル・ジャパン株式会社
「RED BULL」は、「翼を授ける」というキャッチコピーで有名なエナジードリンクを販売している、レッドブル・ジャパン株式会社が運営するオウンドメディアです。
最大の特徴は、メイン商品であるエナジードリンクに関する記事がほとんどないという点です。
メインターゲットがアクティブに活動している学生やアスリート、クリエイターであるため、さまざまなジャンルで活躍するトップアスリートやクリエイターに関する記事が発信されています。
目標に向かって頑張っている人に響くコンテンツ作りを徹底することで、ブランディングに成功した事例です。
採用活動
LINE株式会社
「OnLINE」は、もともと「LINE HR BLOG」として運営されていましたが、2020年8月のリニューアルのタイミングで名称変更がされました。
OnLINEは採用を目的にしたオウンドメディアであるため、LINE社内のカルチャーや人物、活動をありのままに発信することで、企業理念に共感する応募者を増やすことに成功しています。
カテゴリーは「WORKS」「VISON」「CULTURE」とわかりやすく分類され、企業内の取り組みや働き方など、知りたい情報がすぐに見つかるような設計になっています。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリのオウンドメディア「mercan」は、「メルカリの【人】を伝える」といったコンセプトのもと、採用を目的に運営がされています。
メルカリの社員インタビューやノウハウ記事などに加え、社員が自らの視点で会社の日常やイベントを紹介するコンテンツが用意されているのが特徴です。
メルカリの生の声を掲載することで、求職者が社風に合うかどうかを判断できる材料となり、採用ミスマッチの低減に繋がります。
また、社外だけでなく、メルカリ社員同士のコミュニケーションの場として活用されているのも「mercan」ならではだといえるでしょう。
株式会社LIG
成功事例としてよく挙げられる「LIGブログ」は、Webサイト制作・教育事業をしている株式会社LIGのオウンドメディアです。「LIGブログ」は5つの目的を掲げてメディアを運営しています。
- 【教育】自分たちの学んだことや技術を、記事としてアウトプットをしよう
- 【営業】自分たちのやれることを伝えて、仕事を貰おう
- 【採用】一緒に働きたいと思ってもらえるような情報を発信しよう
- 【収益】ブログで直接収益を上げよう
- 【ファン】上記4つの活動を通じて、LIGのファンをつくろう
Web制作に関するノウハウ記事は、Web・IT業界の制作会社の人のみならず、制作を依頼したいと考えている人にも読まれるような内容となっています。
また、SNSで流行りそうなコンテンツを分析して記事にすることで、結果的に、Web業界に興味のあるユーザーの認知度を高めることができています。
メディア自体に遊び心があり、記事もユニークであるため、多くのファンを獲得して問い合わせに繋げることに成功しています。
オウンドメディアを成功させるポイント
成功事例として紹介した企業は、オウンドメディアで成果を上げるためにさまざまな施策を行っています。
オウンドメディアは、ただ運営をしているだけでは効果があまりありません。長期的に運営していくためには以下の3つのポイントを押さえる必要があります。
オウンドメディアを長期的に運営していくポイント
- KGI、KPIを明確に設定する
- 長期的に運営できる体制を計画する
- 過度にSEOを意識しすぎない
3つのポイントについて詳しく解説します。
KGI、KPIを明確に設定する
オウンドメディアは、目標を明確にすることが大切です。
オウンドメディアで成果を得るためには、始めにKGI(Key Goal Indiactor:重要目標達成指標)を決め、その目標を達成するためにKPI(Key Peformance Indiactors:重要業績評価指標)という中期的な目標を立てる必要がなります。
たとえば「採用者の社内定着率80%以上」というKGIを設定したとします。
その上で、KGI達成の判断基準となる「問い合わせフォームからの応募者◯人以上」「SNSのシェア率◯%増」などといった、KGIに付随するKPIを設定するようにします。
このように、オウンドメディアで成し遂げたいことを明確に設定することで、それを達成するためにどのような施策を打つべきなのか判断ができるようになります。
長期的に運営できる体制を計画する
オウンドメディアはすぐに効果が期待できるものではないので、長期的な視野で考えることが大切です。
1年後、2年後にはどのようなメディアに成長させるのか、どんなコンテンツを増やしていくのかを想定しつつ運用する必要があります。軸がぶれてしまうと、ユーザーに届けたい情報を適切に発信することが難しくなってしまいます。
運用初期は、一定数のコンテンツが蓄積されるまでクオリティよりも定期更新を心がけ、コンテンツが増えてきたらブラッシュアップしていくとよいでしょう。
長期的な視野で考えることで社内のリソース確保がしやすくなり、運用に対する不安も少なくなるはずです。リソース不足が見られるようでしたら、外部の制作会社にコンテンツ制作を依頼する選択肢もあります。
過度にSEOを意識しすぎない
SEO施策を行うことは、オウンドメディアを運営していく上で大切なことです。しかし、過度にSEOを意識してしまうとユーザーが離れてしまうケースも多いので、注意が必要です。
PVやCVを増やすことを意識しすぎたあまりにユーザーに対する意識が下がり、その結果としてユーザーからの評価が落ちてしまうことがあります。
「興味深く有益なサイトにする」「読者が求めているもの提供する」といったユーザーファーストを忘れないようにしましょう。
まとめ
今回は、オウンドメディアでの成功事例をBtoC、BtoBに分類し紹介しました。
オウンドメディアは、企業によって達成したい目的や成果が異なります。オウンドメディアを成功させるためには、目標を明確にし長期的に運営できる体制作りが大切となっています。
紹介した成功事例を参考に、自社が達成したい目的を設定してみてください。目的を明確に設定することで軸がぶれることなく、ユーザーに良質なコンテンツを届けることが可能です。
すぐに結果を求めるのではなく、長期的な視野で取り組んでみてください。