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要件定義とは要件を定義すること
要件定義とは、その名の通り要件を定義することです。まずは「要件」とは何かを知っていきましょう。
要件とは
要件とは、一言でいえば注文のことです。企業や学校などの依頼者が、制作会社やフリーランスなどの制作者に向けて出した「こんなWebサイトを作りたい」という注文こそが要件です。
要件定義という言葉は耳慣れないものですが、実は、日常においても要件定義は行われています。
たとえば飲食店において、お客さんから「餃子とビールをください」という注文があれば、「餃子」「ビール」が要件となります。
しかし、飲食店では時々「おすすめをください」といった注文をする人もいますよね。
常連であればいざ知らず、初めてのお客さんからそのような注文をされると、お店の人は「どれくらい食べられるのかな」「苦手なものやアレルギーはないのかな」と困ってしまうことでしょう。
そこでお店の人は「苦手なものやアレルギーはありますか?」「辛いものは平気ですか?」などと確認をしたうえで「では、麻婆豆腐はいかがですか?」と注文を決める、つまり質問を重ねることで要件を定義していきます。
Web制作においても「採用LPを作りたい」といった具体的な要件から「この商品を売りたいんだけど、Webでできることない?」といった漠然とした要件まで、それぞれヒアリングをして定義していく必要があります。
なぜ要件を定義する必要があるのか
要件定義にあたって定めるべきは、制作物だけではありません。先ほどの飲食店の例で考えてみましょう。
たとえば、お客さんの「餃子とビールをください」という注文に「5分で用意できますか?」という要件がプラスされると、お店の混雑状況によっては実現が難しいかもしれません。
「ちなみに今、30円しか持ってません」という要件を追加したら、お店から追い出されてしまうことでしょう。
お店側も同様です。事前に伝えることなく餃子1枚にお客さんを1時間も待たせてしまったり、チャージが3,000円と高額であったりすれば、トラブルに発展してしまいます。
上記は極端な話ですが、予算が少ない、リソースが足りない、制作期間が短すぎるなど、似たようなケースは制作の要件においても起こります。
そのため「どんなものを作りたいのか/作れるのか」だけでなく、「どんなものを」「どれくらいの予算で」「いつまでに作りたいのか/作れるのか」をしっかりと定義する必要があります。
つまり、要件定義とは「依頼者と制作者の間で、これを実現しましょうという合意形成を行うこと」と言い換えられるでしょう。合意形成によって、言った言わないのトラブルを避けることができるのです。
参考図書:はじめよう! 要件定義 ~ビギナーからベテランまで
QCDとは?要件定義で必要となる3つの指標
要件定義では「どんなものを」「どれくらいの予算で」「いつまでに作るのか」を定めます。この3つの指標は、以下の言葉に置き換えられます。
- クオリティ(質)
- コスト(予算)
- デリバリー(納期、スケジュール)
3つの指標は、Quality、Cost、Deliveryの頭文字をとって「QCD」とも呼ばれます。それぞれの要素について説明します。
クオリティ(質)で決めること
QCDにおけるQ、つまりクオリティは、Web制作において最優先されるべき要素です。
どんなに低予算・短納期で納品しても、品質が悪ければその制作は失敗だと言えるでしょう。某牛丼チェーン店も「まずい、やすい、はやい」では、今の市民権は得られなかったはずです。
クオリティの指標では「Webサイトの目的が叶えられるデザインや設計になっているか」「システムは適切に実装されているか」などをチェックします。
そのためには、まず「どうして今回Webサイトを制作(またはリニューアル)したいのか」といった依頼目的を明確にしなければなりません。
たとえば「若手の求人応募を増やしたい」という制作目的があるとすれば、以下の項目を定義していく必要があるでしょう。
- 若手って何歳くらい?
- どんな性格の人?
- その人たちは今どういうことで悩んでいる?
- サイトを見ることでどういうアクションをとってほしい?(応募してほしい、会社見学に来てほしい、まずは認知してほしいなど)
- そのためにどんなサイトを制作する?
- どんなコンテンツを用意する?
- それぞれのコンテンツはどのページにどのように配置する?
- 必要な機能は何?(応募フォーム、予約システムなど) など
これらを事前に定めることで「これが実現できたらこのWebサイトのクオリティは叶えられているね」という合意を交わしておくことが大切です。
コスト(予算)を抑えるには
QCDにおけるC、つまりコストは、低価格で制作できるに越したことはありません。
もし依頼者が要件定義にかかる費用を落としたいと考えているなら、依頼者側でできる限り、Webサイトのクオリティ条件を明確にしておくのがよいでしょう。
ただし忘れてはならないのが、要件定義は依頼者と制作者、双方の合意に基づくものであるということです。
依頼者側でやりたいことがどんなに明確になっていたとしても、そのやりたいことが制作者側で実現不可能な内容である限り、要件定義は失敗に終わってしまいます。
また、要件定義が適切にできていないと、制作途中で追加するページやシステムなどが増え、追加費用が発生してしまうことでしょう。
制作するWebサイトでどのようなことを叶えたいのかをしっかり整理したうえで、予算内でどのようなことができるのか、制作者から提案を受けることが必要です。
デリバリー(納期、スケジュール)の立て方
QCDにおけるD、つまりデリバリーは、クオリティとコストを左右する重要な要素です。
製作期間は長いに越したことはありません。しかし、Web制作は、いつまでに公開したいといった納期が決まっていることが大半です。
依頼者が短期間での制作を叶えたいのであれば、制作者にプロジェクトの人員を増やしてもらうことで対応が可能かもしれません。
しかし、人手がかさむ分だけ制作費は高くなります。もし予算が決まっており制作費を上げられないのであれば、クオリティ面での妥協が必要となるでしょう。
このように、QCDはそれぞれが密接に関係し、何を優先するかで最終的な要件が決まってくるのです。
要件定義の流れ
要件定義で定める内容がわかったところで、要件定義の基本的な流れを説明します。
1:依頼者に課題が発生する
まずは、依頼者に何かしらの悩みや課題が生まれるところからスタートします。
「自社サイトが古臭くなってきたな」
「最近、威勢のいい若手の応募がないな」
「この商品、どうやって告知しよう」
など、すべてのWeb制作の原点には、依頼者の漠然とした課題があるはずです。
2:依頼者が制作者に要望を出す
次は「注文」の段階です。悩みや課題を解決する手段としてWeb制作を考えた依頼者が、制作者へやりたいことを伝えます。
「自社サイトが古臭くなってきたから、サイトリニューアルをしたい」
「威勢のいい若手の応募を増やすために、採用LPを作りたい」
「商品の告知のために、Webで何かできることはないかな」
など、要望はさまざまです。
3:制作者が依頼者にヒアリングをする
「どんなものを」「どれくらいの予算で」「いつまでに作りたいのか」、制作者は依頼者の望むQCDを確認します。
QCD
- クオリティ(質)
- コスト(予算)
- デリバリー(納期、スケジュール)
4:制作者が実現可能か考える
Webサイトは、ヒアリングを行うWebディレクターが一人で作るものではありません。デザイナーやコーダー、エンジニアなど、社内外のリソースを確認する必要があるでしょう。
5:制作者が依頼者へ提案する
制作者はフェーズ3、4で確認した内容をもとに、要望を受けられるかどうかについて、依頼者へ伝えます。制作者が制作のプロとして、依頼者の希望を叶えるより良い案を提案するのも、このフェーズです。
6:依頼者と制作者で合意形成を行う
制作者からの提案を受けた依頼者は、提案内容について何かしらの意見を持つことでしょう。話し合いを重ねて「じゃあ今回はこんなものをこの予算でいつまでに作りましょう」という合意を交わします。これが要件定義のゴールです。
まとめ:要件定義とは依頼者と制作者の間で実現することの合意形成
要件定義はトラブル回避のため、そして質の良いWebサイトを双方で決めた予算や期間内で制作していくために必要となる工程です。
また、何をもって「質が良い」と判断するのかも、要件定義で定めなければなりません。
「どんなものを」「どれくらいの予算で」「いつまでに作りたい」というWeb制作の目的を依頼者が叶えるためには、要件定義が適切に行える制作者を探して、依頼する必要があります。
「制作会社が要件定義を行ってくれない」
「要件定義がうまく進んでいない気がするけど、どうしたらいいんだろう…」
「制作費を抑えるために、自社でできることって?」
など、要件定義まわりのことでお悩みのWeb担当者の方は、ぜひオンライン相談サービス「ちょこバウム」を利用して、制作会社の意見を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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